幸福なポジティヴィスト

アイコンの作者忘れてしまいました。

アナール派

アナール派の誕生
・アンチテーゼとしての出発*1
→19世紀後半からフランスの歴史学会の主流を占めた、狭義の政治史を中心とした実証主義史学に対して、きわめて批判的態度を明確にすることで、一種の知的運動体を形成する。
・マニュフェスト
個別事象より集合事象を重視し、すべて部分は全体的連関のもとに把握し、歴史を総合の学にしようとする「全体性を志向する歴史学」。
・学際的研究
→歴史を他の学問領域との協同により明らかにしていく。「人間諸科学に向けて開かれた歴史学。いや、われわれが関心を持っているのは、歴史学そのものというより、今日ではそれらの人間諸科学の総体なのである」。

〇多層的時間
・長期的な時間の枠組み
→数百年、あるいは数千年の時間の幅のなかで、きわめてゆっくりとしか変わることのないことがらを社会のより規定にあって人と社会を規定している枠組みとして認識しよう!
→背景として、経済史における景気循環論や景気変動論が登場することと不可分。
Ex)ブローデルの博士論文『フェリペ二世時代の地中海と地中海世界』(1949)

三部構成
第一部……ほとんど動かざる歴史。人間と人間を取り巻く環境との関係のあり方の歴史。
「地理的時間」=地中海。
第二部……緩やかに変動していく歴史。社会集団の歴史(社会史)。社会諸構造の歴史。
第三部……事件史ないし個別事象の歴史。個人が経験的に監督しうる時間。
→これら3つの時間の層が、フェリペ二世時代にいかに結び合って歴史全体を構成していたのかを考える。

〇空間の多層化
・グローバルな位置づけの再点検
→非西洋世界の再発見。世界史におけるヨーロッパは、進歩の極地と位置付けることは不可能。
・ローカルな多層性。
→ヨーロッパ内部、国民国家内部における空間の多様性と多層性を認識、再点検。
Ex)地理的、社会的、文化的多層性。


<参考文献>

福井憲彦,1995,『「新しい歴史学」とは何か――アナール派から学ぶもの』講談社

竹岡敬温,1990,『『アナール』学派と社会史――「新しい歴史」へ向かって』同文館.

「アナール」学派と社会史―「新しい歴史」へ向かって

「アナール」学派と社会史―「新しい歴史」へ向かって

*1:1929年に、マルク・ブロックとリュシアン・フェーブルという歴史化の出会いから出発した雑誌『アナール』の発刊の経緯から沿革については、竹岡敬温,1990,『『アナール』学派と社会史――「新しい歴史」へ向かって』同文館などに詳しい。。