幸福なポジティヴィスト

アイコンの作者忘れてしまいました。

用語学#5 act/行為

用語学#5 act/行為

 社会学者は行動と行為を区別し,行為は目的,意識,対象と関わる.パーソンズは,行為が次の4点で社会学的分析の基本的な単位であるとする.①エージェントやアクター*1,②行為が向けられたことの終わりや未来の状態,③状態を構成し,行為を意味する状況,④行為が影響を与え,選択を意味する基準.George H. ミードは,衝動,状態の定義,完成の観点で行為を定義する.
 行為と行動の基本的な区別は,元来ウェーバーによって示されたもので,彼は行為の意味を解釈するための科学として社会学を定義した.行為の概念は,シュッツによっても議論されてきたが,彼はウェーバーのアプローチが提示したものよりはるかに複雑である.例えば,行為と状況を意味することに帰することで意味していることははっきり決まっていない.社会学者にとって,行為の主要な重要性は,それが故意でありかつ未来の目的を認識することに向かうことである.

参照:action theory; agency and structure; behaviourism; methodological individualism; symbolic interactionism.

[参考]

The Penguin Dictionary of Sociology: Fifth Edition (Dictionary, Penguin)

The Penguin Dictionary of Sociology: Fifth Edition (Dictionary, Penguin)

安川一,1985,「G.H.ミード「社会心理学」の性格と課題――社会的実践と社会心理学」『社会学評論』36(2): 217-278.
椎野信雄,1978,「G. H. ミードの社会心理学――主体と客体の動的過程としての自我」『ソシオロゴス』2: 44-55.
土肥豊,1988,「G.H.ミードの社会観再――D.L.ミラー編 『個人と社会的自我』を踏まえて」『ソシオロジ』33(2): 111-124.
小笠原真,1990,「George H.Mead研究――特に彼の「社会的行動主義」の視座と「自我」論を中心に」『奈良教育大学紀要 人文・社会科学』39(1): 1-19.

*1:国際政治学の分野では,「エージェント」と呼ばれる行為主体のことを「アクター」と呼ぶことが多い.アクターとは,自分の意思を持って「act」ができる主体=actorのことを意味し,主にNGOや企業などの非国家的アクター(non-state actors)を指す.一方で「エージェント」は,「プリンシパル―エージェンシー理論」を連想させ,エージェント=代理人という意味で捉えられてきた.つまり,エージェントとは「act」できる行為主体ではあるものの,依頼人ないしはそれに相当するものから,その行動に対して何らかの「制約」または「行動目的」を課せられており,必ずしも自分の意志をもって「act」できるとは限らない,というニュアンスで使われている.社会学においてこの区別がどのようになされているのかについては調べてから.