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津田正太郎「第1講 メディアは社会のあり方を変えるのか」『メディアは社会を変えるのか』

<書誌情報>
津田正太郎,2016,『メディアは社会を変えるのか――メディア社会論入門』世界思想社

メディアは社会を変えるのか―メディア社会論入門

メディアは社会を変えるのか―メディア社会論入門


「第1講 メディアは社会のあり方を変えるのか」2-11.

〇メディア環境の変容
・かつて,メディアを媒介にした体験を「疑似体験」と呼び,メディアによって媒介されながら構成される環境を「疑似環境」と呼び,直接体験と区別していた.
⇔日常生活へのメディアの浸透と同時接触を続ける「メディア人間」の誕生は,メディア環境からの離脱の方が非日常的体験であり,メディアと密接な関係を維持することが,現代人たる条件となっている.
⇒このようなメディア環境とはどんな環境世界なのか?メディアと人間(社会)との関係性は?

〇メディア論のパースペクティブ
マクルーハンの「メディアはメッセージ」というテーゼ.
→メディア(テクノロジー)そのものが,メディアが伝達するメッセージとは独立にもっている人間の経験と関係を作り出す力をもっている.
「話されることばが人間の最初の技術(テクノロジー)であった」(マクルーハン 1987: 59)
ラジオはヒトラーと一対一で話す「感覚」をオーディエンスに与え,熱狂を生み出すことに成功した.
佐藤卓己(2014)は,ラジオで伝えられた天皇の肉声の集合的な聴取経験が、「国民的記憶」としての終戦記念日をつくりあげたと論じる.
⇒「音声」:「文字」=聴覚:視覚とかかわるテクノロジーが,行為者間の相互関係において,そして社会との相互関係において重要な論点となる

〇メディアとは何か?
・メディアを「情報を媒介するもの」とすれば,範囲が広がりすぎるので,本稿では「多様な情報の伝達を主目的とする手段および組織をメディア」とし,インターネット,電話,テレビ,新聞や書籍といった手段と情報を生み出す組織に限定し考える.

〇社会とはなにか?
・分業によって結び付いた集団
・社会≒国家
・「経済と政治のあいだにあるもの」(アーレント
→経済と政治の不可分な関係が社会を生みだし,政治的な領域での多様性を損なう.
・世間や間柄といった概念

〇メディアと社会の関係性
(1)メディア(技術)決定論
・メディアは社会に一方的に影響を与える.あり方を決める.
→インターネットの普及で民主主義を可能にする/サイバーカスケード,炎上など意見の偏りによって多様な意見や少数派が排除される.
(2)社会決定論
・社会の側がメディアのあり方,使い方を決定する
①電話
・音楽や演劇を伝達するメディア→社会のニーズに従って双方向のコミュニケーション・メディアとなった(吉見 1995: 19).

⇒社会とメディアの相互関係を想定しよう.


[参考]
マーシャル・マクルーハン,1987,後藤和彦・高儀進訳『人間拡張の原理――メディアの理解』竹内書店.
佐藤卓己,2014,『増補 八月十五日の神話筑摩書房