幸福なポジティヴィスト

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用語学#7 action theory/行為理論

用語学#7 action theory/行為理論

 主観的な行為(action)は,意味や意図が関係しているという点で,行動(behaviour)から区別される.行為理論は個別的アクターを起点とする行為の分析である.様々な要素の中から,行為者の目標,期待と価値,目標達成のための手段,状況の性質,そして状況に関する行為者の知識といった諸要素を明確にすることによって,一般的な状況における典型的なアクターという観点で分析が進められる.T・パーソンズは,そうした諸要素を「行為の準拠枠(action frame of reference)」とした.
 行為理論には「解釈的な(hermeneutic)」ものと「実証的な(positivist)」ものという2つの形があり,両者とも「シンボリック(象徴的)相互作用/Symbolic interaction」論と密接に関連している.またこれらは,M・ウェーバーの研究に端を発するものである.ウェーバーは行為を以下の4つのタイプに区別した.すなわち,①伝統的行為,②情動的行為,③目的合理的行為/Zweckrational,④価値合理的行為/Wertrationalである.伝統的行為とは,単に過去にそれがなされてきたという理由だけでなされるような行為のことである.情動的行為とは,感情を表現するためにのみなされる行為である.しかし,ウェーバーはこれら2つの行為の形態には比較的興味はなく,合理的行為をより重要視した.目的合理的(手段的行為)とは,アクターが目的に対し様々な手段を比較するだけではなく,目的の利益それ自体をも計算する行為である.価値合理的では,アクターが目的それ自体を最終的な目的としており,その目的への様々な手段を比較することさえもしようとしない.ウェーバーは,行為の4つのタイプが理念系であり,行為が1つまたは複数のタイプの複合体であることが経験的に可能であることをはっきりと示している.
 ウェーバーにとって,行為は「意味のあること」という点から定義されているということが重要である.社会学的分析が行為がアクターにとって持つ意味を同定することで進められる.解釈的行為理論は,この意味のあることを理論的優先事項とする.つまり,行為と意味が密接に結合しているのだ.シュッツは,この視座を応用
させたうちの1人だ.彼は,ウェーバーの行為理論は意味がアクターからかけ離れている行為の意味を十分に説明していないと指摘する.それは,社会学者によって課された客観的カテゴリーになる.
 シュッツは,行為の解釈へのカギが,経験の道の概念の中に位置付けられていた.我々の経験は継続的ながれを形成する.それぞれの経験はそれ自体では意味を持たないが,経験が過去に後退するので,その反映によって意味を与えることができる.しかしながら,行為はシュッツが未来の完全なる緊張と呼んだものに行為は反映される.シュッツにとって,この反応の形は重要である.というのも行為は意図とその影響の産物であるからだ.企画や計画によって決定されたものである.シュッツは「動機」によって前者は未来に言及し,行為は手段であるという目的に相当する.「動機のため」を区別する後者は目的のための過去を示し,行為を理解するための当面の理由である.社会的行為は動機のため誰かの期待の道に参照を含む人です.社会行為はそして,たとえ社会的行為が両サイドで生じる形で定義されたとしても,社会的相互作用がある.
 一般的に,解釈学的な行為理論化が行為の有意味性をより重要視すればするほど,その理論のうちに社会構造の概念を取り入れることが一層困難になる.シュッツは故人行為者が規定する働きを成す社会構造に対していかなる関係を持つか,という問題に対して明確な答えを与えていない.一方,パーソンズの理論を代表例とする実証主義的な行為理論は,社会構造,および社会構造がいかにして行為者にとって有効な目標と手段を用意するか,ということにより多くの関心をいだく傾向がある.したがって,実証主義的な理論においては,行為や相互行為は,社会システム全体の分析より重要性の低い,残余概念として扱われがちである.つまりそこでは,社会的行為者の意図と行為の直接の結果として社会構造をとらえる考え方は,行為者としての人間の共通文化に社会化された存在とみなすことによって,ほとんど失われてしまうのである.
 パーソンズにとって,行為とは,行為者が事物や人間に付与した意味によって意味付けられた行動のことである.行為者は,目標を定め,適切な手段を選択する.行為過程は状況による制約の下で,シンボルと価値によって導かれる.ここで最も重要なカテゴリーは,相互行為,すなわち他の行為者に向けられた行為である.両当事者間で相互行為が繰り返されると,相互的な期待が生じてくる.この当事者は双方とも,相手の行動と期待に合わせて,自身の期待と行動を調整しなければならない.このような期待が,行為を予測するうえで信頼できるものとして確立されると,それが行動を規制する規範となる.そして,この規範に従うことは,行為をより有効なものとするだけではなく,行為者に真の満足感を与えることにもなる.なぜなら,パーソンズによれば,行為者は他者の是認を必要としているからである.これらの規範が,社会に制度化され,かつ個人に内面化されて,社会的秩序の基盤となっているのである.ギデンズは,行為と構造の区別に関してこれまでの限界を越えようと試みている.彼は,「構造の二重性」という概念を通じて,行為者の知識能力と現実に存在する知的資源ということを強調している.


[参考]

The Penguin Dictionary of Sociology: Fifth Edition (Dictionary, Penguin)

The Penguin Dictionary of Sociology: Fifth Edition (Dictionary, Penguin)