幸福なポジティヴィスト

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伊藤和子,2014,「国連人権活動トップによる日本への警告——「慰安婦」問題の本質とは」

<書誌情報>
伊藤和子,2014,「国連人権活動トップによる日本への警告——「慰安婦」問題の本質とは」『世界』862: 29-32.

世界 2014年 11月号 [雑誌]

世界 2014年 11月号 [雑誌]

国連人権高等弁務官声明
・二〇一四年八月六日、ナビ・ピレイ国連人権高等弁務官が、日本政府の「慰安婦」問題への対応を批判するステートメントを公表した。
歴史修正主義
安倍政権は、河野談話検証を通じて、河野談話を継承すると表明する一方、本質的には換骨奪胎にしてきた。
河野談話検証は、第一次安倍政権で閣議決定された「調査結果の発表までに政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」という結果を踏襲するものだったが、これは河野談話の認識とは全く異なる。
朝日新聞誤報を受けて、国内では歴史修正主義の動きが高まり、人権問題としての「慰安婦」問題そのものが捏造だったかのような言説がひとり歩きしている。
○強制連行の有無
・強制連行があったか否か、しかも物理的証拠があったか否かの一点に執拗にこだわって、問題を矮小化し、「強制連行の証拠が否定された以上、日本に加害責任はない」というような態度はまっとうな人権感覚から著しく外れる。
・スマラン事件などの公文書が確認されている
・クマラスワミ・マクドゥーガル報告
・未成年かつ植民地は強制的を誘発させる。
・裁判所での認定など
○クマラスワミ
・クマラスワミ報告は吉田証言のみに依拠して書かれたものではない。
・クマラスワミ報告の中心は被害者の聞き取りを中心としたものだ。
・クマラスワミ報告の中心論点は①毎日、集団的なレイプが行われたこと、②身体的に苛酷な虐待が行われたこと、③戦争下において、強制売春・性的従属、虐待の被害を戦争中に耐え忍ばなければならない状況におかれていたことを総合判断した結果。
・人権侵害的性格を意図的に無視・棚上げしようとしている
○国際社会のコンセンサス
・戦時下の女性に対する深刻な人権侵害行為にほかならないという国際的な常識と、日本の現在の対応が国際社会のコンセンサスから著しく逸脱していることを示している。
・ピレイはルワンダ内戦下での、民族浄化としての集団レイプはジェノサイド罪とする画期的な判決を出した。この判断がきっかけとなり女性に対する暴力が戦争犯罪、ジェノサイド、人道に対する罪を構成する規定する。彼女の発言は国際法の到達点に依拠したものである。
・歴史の歪曲によって諸外国の信頼を勝ち取ることはできない。人権否定の言説が声高に叫ばれる社会はおかしい。