幸福なポジティヴィスト

アイコンの作者忘れてしまいました。

N, Fairclough, Chapter 2 "Approach to Media Discourse" MEDIA DISCOURSE



ABSTRACT

 本章は,メディアディスコースに関する先行研究の説明および整理を目的とする.その際,メディアディスコースに関するすべての文献を扱うのではなく,フェアクラフ独自の分析枠組の発展に寄与したものを扱う.それらは以下の6点であり,それぞれに節を与えている

1節 言語学と社会言語学的分析

2節 会話分析

3節 記号論分析

4節 批判言語学と社会記号論

5節 社会認知分析

6節 文化一般分析

そして,最後の第7節「批判的ディコース分析に必要な事」と題して,先行研究を整理したうえでの,フェアクラフの批判的ディスコース分析に関わる重要な8つの点についての説明が結論となる.

 

 

1節 言語学的分析と社会言語学的分析

言語学におけるメディア言語

言語学はメディアで使われている言葉が特有の文法構造や特有の発音パターンをもつことに関心をもってきた。

Ex)新聞の見出しは、特色のある構文上の性質、奇妙な文法構造をもつ。

 

〇社会言語学におけるメディア言語

Bellの研究は、「variationist」的研究

→可変的な言語学的特徴と可変的な社会的文脈の間の関係に焦点を当てる。

→同じ言語を話す人々の間で使われている言葉のヴァリエーションを研究すること。

Ex)対象のオーディエンスに応じたラジオのリポーターの言葉づかい

 

〇ベルの研究に足りない2つの点

①メディアの社会的側面という狭い概念という点

②言語と社会文化的な文脈間の系統的なつながりを明らかにしようとしていない点。

 

 

2節 会話分析

エスノメソドロジー

 会話分析はいわゆる「ethnomethodologyエスノメソドロジー」といわれている研究分野によって発展させられてきた。

※「ethnomethodologyエスノメソドロジー」:アメリカの社会学者・Harold Garfinkelが自らの提唱する研究方法を表すための造語。日常の社会生活をおくるうえで経験する様々な事柄がどうやって当たり前のこととして成り立っているのかを明らかにしようとする。人々(ethno)が社会を理解し、作り上げる方法(methodology)を探求すること。

 

事例:インタビュー研究

インタビューする側によって使われる「formulation/公式化」に焦点をあてる。

公式化:ここでは、インタビューに答えた人がいったことを要約するために、インタビューする人が使う装置。言われたことのある側面を強調し、練り上げていくこと。

Heritage:公式化=インタビューする側が強制的に操作させられる制約の範囲内でインタビューを管理するために使う技術的な装置。

第一の制約:オーディエンスの影響

→公式化はインタビューされる側が答えたことをはっきりさせ、暗に意味していることを抽出することによってオーディエンスが継続的に関連づけられることを確実にする方法である。

第二の制約:インタビューする側は「正式で中立的な立場」を維持することを求められる。

→新しい公式化は、言われたことを評価したり、物事をインタビューされる側にとって簡単にしたりより難しくさせたり、インタビューの方向を一つの方向に押し出したりする明示されない方法を提供する。

 

⇒研究成果は制度的諸問題の技術的な解決方法となる。

→とりとめのない諸実践がどのように制度的諸構造と諸実践に基礎づけられているのかを示しているから。

 

⇔不十分な側面もある。

ニュースインタビューの「表出しない基礎的なルール」という普遍的な側面を強調するが、ニュースインタビューは統一的なジャンルではない。

→多様なインタビューがある。

 

〇グレートバッチの研究

インタビューされる側はインタビューする側の質問には答えないが、その関連性を否定することによってはじまり、関連した質問であるとインタビューされた側が考えていることを話し、それについて話し出す。

⇔インタビューされる側は質問に答えるべきであるという規範の暴力である。

→この視点を見落とすことは、インタビューされる側は、少なくともインタビューする側の質問にされる側を結びつける緩やかな要求に従属して、彼ら自身のトピックについて話す場所としてニュースインタビューが日常的に見られていることを示す。

 

〇まとめ

会話分析は言語学と社会言語学の長所を共有した分析方法である。

→相互作用の結果としての会話の相関的な側面に注目。

⇔表象問題と関連する言語的特徴にはほとんど注目していない

⇒社会と文化―権力、イデオロギー、文化的価値観の関係―という上部の構造の性質と会話の性質とを結び付けることも妨げてしまう。

 

 

3節 記号論分析

〇記号分析とはなにか

記号分析:テクスト分析をメディアの文化的分析のカギとなる構成要素として扱う。

→ニューステキストにおける隠れているイデオロギー的なカテゴリー

階級分け、代替可能かもしくは競合している「抑制された」欠けているカテゴリー

 

記号論分析の成果と課題

テクストの分析は、メディアの社会文化的な分析の重要な一部であるということを、テクストの性質とイデオロギー、権力関係、そして社会文化的な価値観を結びつけることによって、確立していること。

言語学的な分析と比較すると、テクスト性の詳細な性質に系統的に取り組んでいない

 

 

4節 批判言語学と社会記号論

〇批判言語学とは

1970年代に発展したディスコース分析の一つ。

→「記号、意味、そして、ディスコースの記号構造を支配する社会的及び歴史的条件の関係性に対する探究」のこと(Fowler 1991 :5)

→「選択体系機能言語学‘systemic’ linguistic theory(Halliday 1978,1985)を基盤として、テクスト型機能的であるということ、テクストが利用可能な語彙的・文法的選択肢から選ばれたものであるということ、そして、その選択肢がイデオロギー的に重要であるということを主張する。

Exジェンダー―女性の呼称(妻、母、男性の性的興奮対象)

 

〇批判言語学の限界

①テクストと生産実践に焦点を当てるが、テクストはオーディエンスの解釈的実践を参照しない研究者によって解釈されがちであった。

→テクストは解釈的実践ではなく、産物である。

②社会文化的実践の観点では、メディア実践とメディアディコースにおいて多様性と変動を抑制させるイデオロギーの再生産におけるメディアの役割という画一的な見方を強調しがち。

→社会の再生産を強調し、その変容にはあまり焦点を当てていないこと。

ディスコースとジャンルという観点におけるテクスト構造の間テキスト性分析を行っているが、これは言語学、そして文法的分析と比較して発達不全に陥っている。

④テクスト全体の高い組織的性質にほとんど注目することなく、「分析化」に多くの焦点を当てている。

 

〇批判言語学と社会記号論

批判言語学は、「社会記号論」という多少異なるアプローチの発展に関与してきた側面もある。

→社会記号論は、言語モードだけではなく、視覚的記号モードに重要性を当てている。

→のちの章でくわしく。

 

 

5節 Van Dijkの社会認知モデル

ディスコースの社会認知的アプローチ

Van Dijkはニュース(特に新聞)ディスコースの観点から分析するための枠組みを発展させてきた。

3つの範囲や見方「テクスト、ディスコース実践そして社会文化的実践」の観点で概念化される。

⇒社会認知的アプローチは、書き手がどのようのディコースのなかでパワーを行使するのかを明らかにするために、マクロレベルおよびミクロレベルの言語的特徴に焦点を当てることにより、ニュースの産出と解釈といった構造を検証する。

 

〇ヴァン・ダイクの主要な関心ごと

どのように社会的関係と過程(例えば、人種主義の再生産)が、実践のルーティンを通じてミクロなレベルで達成されるのかを詳細に示すこと。

⇔フェアクラフの関心ごと

→メディアにおける言語とディコース実践の変化がどのように社会文化的変動を構築するのかについて詳細に示すこと。

 

〇社会認知的アプローチの限界

①焦点が表象であること。

→ニュースディコースにおける社会関係とアイデンティティ、言語の人間相互間の機能、についてはほとんど注目されていない。

ディスコースとジャンルの形式を通した構築という観点において、テクストは言語的に分析されているが、間テクスト的な分析はされない。

→フェアクラフにとって、言語学的分析は間テクスト分析によって補完される必要がある。

③ニュースの制作実践を、実践の多様性と異質性を背景とする支配関係の再生産と人種主義的イデオロギーに貢献する安定した構造として強調するという偏った見方である。

 

 

 

6節 文化一般分析

〇現代文化研究センター/Centre for Contemporary Cultural Studies

同センターを中心としたメディア研究の一つの潮流

→スチュアート・ホールは所長を務める

 

〇文化唯物論

「文化唯物論者/cultural materialist」のジャンルという視点(Raymond Williams)

→「分節化、技術の発見によって、変化の意識それ自身の形式である意識の変化」としてジャンルにおける変革を見ること、

→一般的な形式の分析をそれ自身文化的なモードの分析とみなすこと

⇒この研究の重要な特徴は、相互作用(テクストの関係性の特徴)と表象に参与すること。

 

 

事例:Montgomeryの「Our Time」研究

BBCの人気ラジオ番組。DJが読者からの手紙を要約する。

→語りの一般構造

 

〇「公共圏」

文化一般分析は放送の分類における変化を放送の「公共圏」の変容に関連付けようとした。

Scannellの「コミュニケーション的なエートス

→放送というジャンルは,非公式な会話的言語の模擬的バージョンを発達させてきた.

Montgomery

→どのようにしてオーディエンスは,異なるセクションの直接的な呼びかけの変化を通じて,複雑で差異化されたものとして構築されるのか.

⇒ジャンルという特徴は,公的なものと公共圏それ自体の構築に関係するものである.

Tolsonのインタビュー研究

→放送の形式枠組みの混ざり合いにおける経験と間テクスト的な複雑性における関連付けられたジャンルと混ざり合ったテクストが,どのように文化変動におけるより広い傾向に結びつくのか.

 

 

再帰性

上記の研究は,個別の一般文化的な確認(「メディアという「パーソナリティなシステム」)を含み,同時代の文化の一般的特徴として受け取られてきた「再帰性」を含む(Giddens 1991)

再帰性とは,テレビのトークショーへの参加者の一部における「自己再帰性のメタディスコース」として,構築としての参加者独自のパーソナリティについて,まさにゲームとしてトークショウにおける「リアルな自己」の見かけ上の発露について際立たせる.

 

 

7節 メディアディコースの批判的分析にとって必要なこと

以下の8点は、フェアクラフの分析枠組みを精緻にする基礎となる。

 

(1)焦点の一つは、社会と文化における変動がどのようにメディアディスコースの実践において示されるか、という点。データの選択は可変性と不安定性の領域と同様に安定性の領域をそれ相応に反映するべき。

(2)メディアテクストの分析は、メディアの言語とテクスト性への詳細な分析も含むべきだ。また、視覚的イメージと音声効果を詳細に分析することも含む。

(3)テクスト分析は、テクストの生産と消費という実践を分析し、完全なものにしなければならない。テクストがディスコース実践のネットワークのなかで継続して経験する変容に注目することを含む。

(4)テクストと実践の分析は、権力とイデオロギーの関係を含んだメディア実践の制度的で社会・文化的な文脈を分析することに位置づけられるべきだ。

(5)テクスト分析は、ジャンルとディスコースという観点で、言語学的分析と間テクスト性分析の両方を含むべきである。テクストは一般的に、ジャンルとディスコースが合わさった混合物の相互テクスト性であり、そのようなハイブリット性は異なる言語学的特徴において示されるものとして認識されるべきだ。

(6)テクストの言語学的分析は多機能性を考慮されるべきであり、テクストにおける同時多発的な過程として表象と関係性とアイデンティティの構造、そしてそれらの間の重要な関係を方向づけられるべきである。

(7)テクストの言語学的な分析は、発音上の、辞書的な、文法上の、そしてミクロな構造上・図式的なものを含んだ多くのレベルでの分析を巻き込む。

(8)テクストと社会/文化の間の関係は直接的に見られることだ。テクストはシャイ文化的に形成されるが、それらはまた社会と文化を変形的であると同様に再生産的であるかもしれない方法で構築する。