N, Fairclough, Chapter 6 "Representations in documentary and News" MEDIA DISCOURSE
<文献>
N・Fairclough, 1995, “ Chapter 6
Representation in Documentary and News”, MEDIA
DISCOURSE, Hodder Education.
○本章の目的(p.103-4)
・「Representation/表象」という概念が、メディアテクストのなかでどのように機能しているのかということ。
→出来事、状況、関係、人々等の物事がどのように表象されているのかに焦点を当てる。
・テクストは、それを産出する行為主体の社会的地位、関心ごと、目的によって異なる「選択/choice」という行為を通して、現実の様々な解釈を構成する。
→表象を分析することは、どのような選択がそこにあったのかを問うことになる。
⇒何が含まれ何が排除されたのか。何が明示され何が明示されなかったのか。何が表面化し何が背景となったのか。何が主題となり何が主題とならなかったのか。出来事を表象するために、どんなプロセスのタイプとカテゴリーが描かれているのか。
○Representation/表象の2つの側面(p.104-5)
(1)命題の構造化(the structuring of propositions)
→「節」のなかでどのように出来事、関係性、状況が表象されているのか?
(2)命題の組み合わせと連続(the combination and sequencing of propositions)
→どの選択が利用可能かという2つのレベルがある。
①「節」間のローカルな連続関係。
a. 複数の節が、一般的に文と説明される複雑な節(一つのまとまり)のなかで、どのように組み合わされているのか。
b. そうした「節のまとまり」の間に浮かび上がる結合の関係は何か?
c. どんな議論の形式が異なるテクスト内で使われているのか?
②グローバルなテクストの構造。
Ex)見出しやリード文
→ジャンルと動的なタイプの分析と関わるもの(Chapter 5参照)。
→オルタナティブで利用可能な動的なタイプや一般図式のなかで、どんな選択がされるのか。
⇒どんな/なぜ、節の要素が主題化され、重要な位置を獲得するにいたるのか?
○言説分析と表象の共通点
・テクストに現れる、表象、現実の意味と構造、そうした選択をする社会的動機といった選択肢の問題が共通した関心ごとである。
→言説間の特性や違いが、どのようにしてテクストの中に現れるのかを示すこと、特定の言説内で利用可能な表象的選択肢があるかを特定すること、の両方に資源を与えることが目的。
⇒言葉の表象に着目する「ミクロ分析」は、内容分析の価値ある補完物となりうる。
⇒テクスト内にあるものを分析する前に、テクストから排除されたものを分析する。
2.Presences and absences in texts:
presupposition/テクスト内の存在と不在:「前提」
○不可視化の問題
・表象の分析は、テクスト内に「あるもの/what is there」を分析するが、テクストから(あってもよいはずなのに)「不在なもの/absences」に注目することも重要。
→市民の死者に言及するテクストと言及しないテクストがあった。
・ジョン・メージャー首相(英)のスピーチ
→「Workfare/社会福祉支援付き労働」というものが存在しているにもかかわらず、「働かないで福祉を受ける人がいるのにそこに予算をつける必要はない」とスピーチした。
・メディアの報道は一般的に歴史的文脈が欠落している。
⇒あるものとないものを対比するというよりは、「あるもの」の異なる「程度」を分析。
→「不在」から「前景化」までの「実在の範囲」という観点。
→「absent – presupposed – background –
foreground」
○前提/presupposition
・あらゆるテクストは「明示された意味」と「暗に示された意味」の組み合わせである。
→そこには様々な「前提」が含まれている。
・「前提」は、オーディエンスを位置付ける。
→テクストが読者をどのように位置づけるのかということは、オーディエンスに帰属する常識的な想定の問題である。
⇒「preconstructed/あらかじめ構築されたもの」。
〇ドキュメンタリー番組に見られるオープニング
・オーディエンスにリアリティを与える効果があり、表象されたものを現実として確立する。
→オーディエンスに現実世界に対する知識を与える効果をもつ。
EX)グアテマラのインディアンの虐殺のドキュメント
→インディアンの存在、古代の伝統、聖域といったものが当然あるかのように語る。
・第三世界の社会や経済についてのドキュメンタリー
→「第三世界」という存在、それと貧困や不平等・暴力といった問題が常識として表象。
○表象とイデオロギーの関係
・イデオロギーは一般的に、明示されたものではなく、テクストの非明示的な意味のなかに埋め込まれている。(p.108)
→イデオロギー分析において、言われていないこと、すでに言われていること、前提とされていることは重要な意味を持つ。
Ex)政府や他の権力やエリートたちの行動、実践、価値観を大衆のものとして一般化する
→存在していない一般的合意を想定して支配関係を見えなくさせることは、イデオロギー的機能を持つものとしてみなすことができる。
3.Representations in clauses/節の表象
○節における表象-1つ目の側面
・利用可能な諸選択
→人は言語的出来事、行為、関係性、状態、またこれらに関連する人や物事、これらの発生の時間、場所、状況、などなどを表象するとき、常に利用可能な諸選択がある。
①語彙による選択
→使い慣れた語彙は、あらかじめ構築された一連のカテゴリーであり、表象はそうしたカテゴリー内に物事を「位置付ける仕方/how to ‘place’」と関係する。
Ex)他人の手による殺人=killing, murder, massacre
②メタファーによる選択
Ex) holocaust,
extermination
③文法による選択
→文法は「プロセスタイプ/process types」と「関係者のタイプ/participants types」とを区別する。
→行為(とその主体)と出来事(とその主体)との違いは現実や物事の本質における違いであるように思われるが、すくなくとも単純な感覚における違いでしかない。
⇒起きたことを言葉で表現するとき、それを行為や出来事として表象するために選択をしなければならない。
○Low-Levelの選択における2つのポイント
Low=1つの節とか1つの単語
①系統的なパターンと傾向
Ex)新聞は、暴力や他の好ましからざる社会的態度における警察の関与に体系的な背景知識を与える。
⇒表象的実践は、累積的に重要なイデオロギー的影響をもつ可能性がある。
②言説を対比させる選択
Ex)経済、社会問題、災害の表象において、因果関係、責任、陰謀を前景化(しばしば隠ぺい)させる言説と諸問題と災害を運命や人間の想定をはるかに超えたものとして表象する言説との間の境界線と関連する、言語的な現実世界の理解を示すこと
○英文法におけるプロセスタイプの違い
・行為、出来事、状態、精神的プロセス、動詞的なプロセス
①行為
・他動詞的構造(S+V+O)
→行為主体が「受け手/patient」に何かをする。
②出来事
・自動詞的構造(S+V)
→起こったことによって受け手に影響したり、起こることへの動的で因果の関係において受け手が行為主体となったり、といった形で、受け手に関係する。
③状態
・等価構造(S+V+C)
→「なること」や「もつこと」
④精神的プロセス
→受け手の反応―精神的プロセスを経験する(experience or undergo)人―現象―外側から意識に衝突する
→認知、認識、影響精神的プロセスがある。
⑤動詞的プロセス
→行為主体と受け手のタイプに関連する。
3-1.事例分析1:「A New Green Revolution?」
○表象の仕方
・貧困者に関連する出来事や状況が、「the poor」に直接言及することなく表現されている。
Ex) crisis,
poverty, inequality, hunger, violence, civil discord
→貧困者はこのプロセスにおいて関係者として表象されていない。
・名詞化された表象
→プロセスが名詞化されるとき、具体的な出来事や状況を示すことからは遠ざかり、その関係者の存在は省略され、明示的に表現されなくなる。
○行為主体
・何かをする人という行為主体ではなく、影響を受けるものとしての「受け手/patient」
Ex)the poor=them, economic systemという抽象的名詞が行為主体。
・行為主体となるときの修飾=red revolution
→「革命/revolution」は、自分たちのためだけに何かをしているという貧困者を暗に意味。
→貧困者の能動的な役割を後景化させ、彼らの受動性を前景化させる受け手として表象。
・行為主体として表象される3つのタイプ
①名詞的
Ex) economic
system
②科学者、「センター・所」などの科学者の集合体
Ex)
international agricultural research centres
③貧者を支援したり、暴力的な革命を計画したりする「the New People’s Army」
→行為主体はthe poorではなく、Army
⇒行為として表現されてきたプロセスが、行為主体、因果関係、責任を前景化させる仕方において、どのようにそれらを後景化させる仕方で表象してきたのかということ。
⇒プロセスタイプの選択、因果関係のプロセスではなくて名詞化されたものという選択、能動的な節ではなく行為主体が消された受動的な節という選択―こうした選択は、後景化させる能力であり、行為主体や責任をあいまいにする能力である。
○カテゴリーと語彙
・貧困者の表象の分類
Ex) poor,
peasants, the people
→状況の説明という観点による表象であり、「the oppressed/抑圧者」のような言葉で暗に意味される搾取の責任という観点による表象である。
・メディアがどこでそうしたカテゴリーを手に入れるのかという問題。
・3つの基本的理解
①常に社会的実践のあらゆる側面を言語化するオルタナティブな方法がある
②オルタナティブな表現は、異なるカテゴリーと一致する可能性がある。
③そうしたオルタナティブな表現とカテゴリーはしばしば異なる言説を認識する
→貧困の言説は、抑圧の言説と対比された表現で書かれ、認識される。
⇔テクスト内の語彙の共起的なパターンに焦点を当てると、異なる言説がどのようにテクストの短い中に一緒に詰め込むことができるのかを示すことができた。
○メタファー
・メタファーは文学的な装置
⇔メタファーの選択に焦点を当てることは、あらゆる領域における表象を区別するためのカギとなる可能性がある。
Ex)「A New Green Revolution」におけるpoor
→「静かなもの/silence」としての貧困者という不可聴性のメタファーを使うことは、貧困者は何も言わないから不可聴なのか、コミュニケーションとしてのメディアが、彼らが言うべきことを表象していないから不可聴なのかという問題をはぐらかしてしまう。
⇔無視できないほどの政治的行動主義は、抜きんでたニュースバリューのカテゴリーという観点からメタファーが使われるので、こうした事例を除いて。
→モントゴメリは戦争関連のメタファーが選挙とそのニュース報道で使われるのかを分析
○再文脈化/recontextualization
・van Leeuwen(1993):表象は社会的実践の再文脈化である。
→表象された社会的実践が、どのようにしてテクストという社会的実践の中に再文脈化されているのかを分析。
⇒表象された社会的実践は、独自の社会的実践であるテクストの関心、価値観、目的に従った方法で変換されたものである。
→同じ社会的実践が、異なるテクストのなかで異なる形で再文脈化され、異なる変容を遂げる。
・8つの社会的実践の要素(van Leeuwen)
①関係者②かれらの行為③状況④道具⑤服装⑥適正基準⑦行動を示す指示語⑧反応
→これらの8つの要素のうちどれが含まれ排除されたのか、相対的な比重などで比較。
3-2.事例分析2:「the Conservative Party Conference in 1992」
・関係者/participants
→明示的に表象されている。
→DM:不可視化しか言及されない。
→G:集合的主体の言及が多い(政治的リーダー、人ではなく場所や会議)。
・関係者と状況の間の区別を描く位置づけ。
DM:単純、静的で脱文脈化されたこの対立。
G:時間の経過とともにより複雑なゲームを展開することと、機能と地位の区別された間の集合的主体と関連することがより重要である。
4.Combination and sequencing of clauses/節の組み合わせと連鎖
○表象の2つ目の側面。
・「節」の組み合わせと連鎖
・談話の記事の区別
Ex)・スピーチそれ自体の記事かスピーチの反応の記事か
・直接引用か、要約か、公式化(解釈)されたものか
4-1.事例分析3:「Tebbit speech」in the Conservative Party Conference―1992年10月6日BBC1夕方のニュースとDaily Mirror―
○異なる点
・内容
→詳細ではなく、反応の例は一つだけで、論争のスピーチの要約で構成。
⇔DM
→スピーチの政治的な影響の詳細、反応。内容は、要約ではなく解釈的な公式化。
・トピック
見出しやリード文でDMは、政治的な影響に焦点を当てる。
・潜在的だが強力な介入
BBC:タビットの攻撃を効果的にかわすハードの姿。
→ハードを支持する形で、政権を支持。
※平等に扱うために顔を出しているが、ハードのほうがより多く出ていた。
・情報の構造
→テーマは、情報的位置づけという点で重要な要素。
BBC:政策の方針についての論争
DM:メージャーの不運や生き残りについて。
・「情報の焦点」
→音声メディアにおいて、「情報の焦点」がどこにくるかという問題。
→イントネーションの「中心」点はどこか?
4-2.ローカルな一貫性とイデオロギー
○ローカルな一貫性の3つのタイプ
①詳細さ/elaboration
→ある節が他の節を記述したり、より特徴的にしたりすることによって、詳しいものにする。
②拡張/extension
→ある節が何か新しいものを加えることによって、意味が拡張する。
③増大/enhancement
→時、場所、状況といった観点で、適切に修正していく。
○明示的・非明示的
・節や文の間のローカルな一貫的関係は、明示的・非明示的になる。
→接続詞や副詞のある文に着目する。
○結合の4つのタイプ(Halliday and Hasan: 1976)
①結合
→接続詞・副詞句の両方を含む
②辞書的な結合
→語彙を通じた結合
③参照
→代名詞のテクストを行ったり来たり、指示語のなかを確定させたり。
④省略記号
→繰り返された記号や代わりの言葉を当てはめられた。
○解釈すること
・解釈とは、テクストのもつ客観的な財ではなく、それを解釈する読者によって確立されるべきものである。
→解釈は、明示的命題よりも、節と文がどのように結びつくのかをけってする必要がある非明示的な命題において顕著に行われる。
→テクストは、それをどのように読むかについては、読者の読みがそれぞれ異なることから、どのように読むのかをを保証することはできない。
⇔ある種「支配的な読み/predominant readings」が存在し、それらは、テクストの暗黙の了解を含む非明示的なテクストに依存している。
⇒テクストは、「理想的な読み」といわれるものをテクストに与えるために必要な非明示的な命題を解釈する「想定された読者」に宛てられたもの。
4-3.事例分析4:再び貧困の表象
・貧困に影響を与えるプロセスは、行為主体が欠けて表象されている。
→一連の因果関係で結ばれた出来事が人的主体と外部の人間の制御を必要としないように、社会的実践を自然科学のモデルに表象する。
⇒社会的実践の責任を省略し、社会的実践を変動させる仲介の可能性は、支配関係を存立・維持する運命論を導きうるという意味において、潜在的にイデオロギー的機能をもつ表象である。
・ローカルな一貫的関係はイデオロギー的解釈のテクスト的プロセスに貢献していく。
⇒オーディエンスの知識、考え、価値観を形成する。
※オーディエンスの解釈的能動性は、テレビの視覚的イメージにおいてよりはっきりとしている。
Ex)ドキュメンタリーの作成。
→一貫したイメージの連鎖を解釈する中で視覚的スクリプトを描くオーディエンスに依拠
貧困のイメージは、そうした状態に置いた道を行進する軍隊の観点を想定する。
○イデオロギー作用
・参照するタイプの結合関係と辞書的な結合がある。
⇔実際に暴力が言及されなかったとしても、暴力と緊張の存在を前提としてきた。
→テクストの定式化や言い換えの仕方は重要である。
Ex)violent revolt=violence
⇒イデオロギー的補足の観点でみれば、テクストの解釈において、政府というよりは、暴力を伴ったとりわけ左翼的な敵対的勢力にするステレオタイプを描くために、観客を動員しているという観点でみることができる。
・後者の位置づけを当然視するという前提に従って、情報とイントネーション的中心は、「暴力と緊張」ではなくて、「減少」に焦点を当てる。
→争うことを前提とする点は、論争という能動的なタイプが連鎖として構造化されている調査報道というジャンルと関連することによって増幅された。
⇒レポート+調査するための問い+問題に関心をもつ証拠といった権威ある説明
・前提を立ち上がらせる問題の要素は、記事の説明と証明の段階の間の要である。
⇒ローカルな一貫性の関係、グローバルなテクスト構造、節の情報構造といったものがどのようにテクスト内で共同で作用するのかを示すことができる。