幸福なポジティヴィスト

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中野康人,2009,「社会調査データとしての新聞記事の可能性――読者投稿欄の計量テキスト分析試論」

<書誌情報>
中野康人,2009,「社会調査データとしての新聞記事の可能性――読者投稿欄の計量テキスト分析試論」『関西学院大学先端社会研究所紀要』1: 71-84.
雑誌発行元の最新刊


1.論文の課題
〇目的
・新聞記事データを社会調査データとして取り扱う準備作業を紹介し,その方法と問題を整理すること.
〇新聞記事の分析
・新聞記事の性質
→定期的に社会の出来事が記述されており,時代を映す鏡である.それが収集・保存されていれば,過去を明らかにするための1つの資料になりうる.
・内容分析の系譜
→内容分析(Content analysis)が確立した1950年代以降,新聞記事の分析は社会分析の王道の一つとなった.特にメディア・スタディーズの領域では,新聞記事だけではなく,新聞そのものが分析対象であり,新聞学という学問領域もある.
見田宗介の「不幸の類型」.
→読売新聞に掲載された身の上相談を用いて「不幸の類型」を試みた.
・新聞記事の分析は,方法論上「質的な研究方法」に属してきた.
→テキストの解釈,つまり,そこで何がどのように書かれ,それはどのような思想的背景,社会的背景によって生まれたのかといった解釈.
⇔Woodward(1934)のように,記事の出現回数や範囲などを計量的に分析する方法も存在する.
→近年,記事のアーカイブ化,テキスト処理の情報技術の発達とあいまって,新聞記事の計量分析は重要になってきた.
〇テキストデータの処理
・従来,日本語は単語と単語の区別が明確ではなく,コンピュータが自動的に処理するには多くの困難が伴った.
⇔近年,言語学情報科学における自然言語処理が発達し,形態素解析と呼ばれる技術で,日本語の文章から意味のある単語を切り分けて抽出してくれるようになった.
テキストマイニングの手法.
Ex)戦争に関する記事は8月が最も多く,原爆の文脈で語られている.
→ある特定の時代と社会において,言葉もしくは事象がどのような意味を持っているのかについて,その言葉の頻度や連関する言葉,文脈等の分析を通じて明らかにすることができる.また時系列的視座を組み込むことで,その意味の変容についても明らかにできる.
〇新聞の読者投稿欄のもつ性質
・投稿者の氏名,職業,住所,年齢が明記されており,それぞれの要素からなる属性と言葉の連関を説明できる.
⇒社会調査で使われる質問票,アンケート調査と同様に,社会調査のデータとして使うことができる可能性がある.


2.実際の分析結果
〇投稿者の年齢分布
・最年少7歳,最高齢94歳,平均値53歳,中央値56歳.
・年齢分布には3つの山.60代から70代の山.40台の山.10台の山.
〇職業の分布
・最も多い順は,無職(約26%),主婦(21%),会社員(7%),そして中高大を含む学生
・教員関係は学校の種類別だけではなく,細かな職位(非常勤講師,教頭,教授などなど)で表記されていた.
・ほかにも雇用形態による区別もあった.非常勤・パート・フリーター・契約社員などなど
〇頻出単語
多い順に,世代,私,年,日,戦争,人,者,心,夏,法,教育,子,戦後,日本,必要,いじめ,言葉,首相,障害,憲法,新聞・・・・
〇共起関係
・共起関係分析は,ある単語が使われるとき,ほかにどんな単語が使われていたのかに関する分析
Ex)老人・パワー,老人・いじめ,戦争・責任,戦争・悲惨・・・