幸福なポジティヴィスト

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小川 祐樹 , 小林 哲郎 , Hahn Kyu S. , Jang Seulgi,2017,「歴史・領土問題に関する日韓新聞報道の比較——トピックモデルを用いたフレーム分析」

<書誌情報>
小川 祐樹 , 小林 哲郎 , Hahn Kyu S. , Jang Seulgi,2017,「歴史・領土問題に関する日韓新聞報道の比較——トピックモデルを用いたフレーム分析」『行動計量学』44(1): 1-15.

〇先行研究の整理
尹・李(2000)
韓国新聞では「一面提示」,「韓国擁護・日本批判」

Oh(2011)
日韓併合100周年に関する6つの新聞記事を分析した
韓国の新聞は道徳フレーム
日本の新聞は未来志向フレーム

Pak(2016)
Semetko&Valkenburg(2010)によるフレーム分類を用いて,朝鮮日報ハンギョレ新聞,読売新聞,朝日新聞の384の慰安婦関連記事を分析
慰安婦の描かれ方には大きな差はない
韓国は責任フレーム,単純に出来事や人々,注目すべき発言を報道
日本は対立フレーム,争点のより深い分析(背景や原因・効果)や専門家のコメントが多く,比較的長い記事
両国とも,個人のストーリーにフォーカスしたエピソディックフレームが圧倒的に多く約4分の3を占める.(韓国の新聞はこの傾向が顕著)
日韓が安定している時期人間的関心フレーム
対立している時期対立フレームや道徳フレーム

●Pakとの違い
慰安婦」や「性奴隷」などのアプリオリなキーワード設定は行わない.日韓四紙の一面記事をすべて分析し,その中から慰安婦問題や領土問題がどのようにフレームされているのかを浮かび上がらせる.
→キーワードやフレームを分析者が設定しないという点で恣意性の低い分析が可能
⇔既存のフレーム分類の適用可能性を検証する理論検証型のアプローチである一方,本研究はボトムアップ型にフレームを抽出する探索的アプローチである.

〇論文の課題
新聞における慰安婦問題や竹島問題が両国の新聞報道においてどのようにフレーミングされているかを明らかにすること.
CTM(トピック間の関係性を考慮したトピックモデル)を日韓両国の新聞記事に適用し,トピック間の関連性に注目することで日本と韓国の新聞報道におけるフレーミングの違いを定量的に明らかにする.

〇結果
韓国の新聞は慰安婦問題と領土問題の連関が強い.
また,独立記念日においては慰安婦問題が取り上げられる.
→日本は慰安婦問題の報道量と竹島問題の報道量の変化の間に連関性はない

日本
竹島→東アジアの安全保障
慰安婦→国内政局の文脈
→互いに関連させた報道ではない
韓国
独島→東アジアの領土問題
慰安婦→日韓の歴史問題としてのフレーム
→強く関連するトピック


コメント
 トピック探索型の手法というように,慰安婦問題の展開過程に照らしわせると,問題点が見えてくる.
 まず,橋下市長との関連で,この時期の慰安婦報道は国内政局でのフレームと指摘しているが,報道内容を読み込むと,橋下市長が女性を蔑視するかのような発言であることが問題視され,これは国際的も問題視されたという内容であり,必ずしも,国内政局と位置付けることはできない.国内政局が関連するのはその後に選挙を控え,橋下市長の紹介に「慰安婦」発言が付随するからである.
 したがって,探索アプローチの可能性より展開過程と照らし合わせない本稿の分析は一部問題がある.
 その点で,探索型アプローチは可能性を列挙する必要があり,結果や考察において一つの方向性を見つける必要はない.