幸福なポジティヴィスト

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有田 芳生 , 北原 みのり , 山下 英愛,2014,「座談会 私たちの社会は何を「憎悪」しているのか——「差別の煽動」と闘う覚悟と希望」

<書誌情報>
有田 芳生 , 北原 みのり , 山下 英愛,2014,「座談会 私たちの社会は何を「憎悪」しているのか——「差別の煽動」と闘う覚悟と希望」『世界』862: 68-79.

世界 2014年 11月号 [雑誌]

世界 2014年 11月号 [雑誌]

北原
九〇年代後半からの歴史修正主義のうごめきに対してリベラルは慰安婦問題においてアジア女性基金をめぐる分断によって、大きな流れとして伝え続けることができなかった
慰安婦問題は日本の社会を象徴している。日本の男性の性のあり方やジェンダーなどいろいろなことが絡み合って、認められない。
日本社会には長い間公娼制度があって、同時に売春婦に対する偏見がある。私は「慰安婦」について考えるならば日本人の慰安婦の問題に取り組まなければならないと思います。日本人の慰安婦は職業的売春婦だったとか、彼らは何も言わず静かに暮らしているじゃないかといいますよね。しかし、そういう分断は人間として本当につらいことです。
この女に冷たい社会で被害者にならないように強者である男に過剰に適応して、女であるということで弱者として扱われたくないと、自分を強く見せようとする女性たちが、声をあげられる弱者に「ずるい」といっている
先ほどの戦時性暴力の研究者たちによれば、アカデミックな世界で日本人の被害者を扱うのは非常に難しい。なぜなら扱った時点で右翼的な言説に利用されえやすいので、なるべくそこは触れない方が研究者としてはよかったのです。でも、日本人が受けた被害にもちゃんと向き合わないと戦争を語ったことにはならない。そこをリベラルな知的なインテリ層が遠ざけてきたことが、重い結果としていま来ている。

日本に対する韓国の中で「慰安婦」問題は性奴隷という人権にかかわる問題だと明確に委員たちは言っています。それに対して、僕も直接聞いてびっくりしたのは、性奴隷ではないというのが日本政府の立場なんですね。しかしそれは歴史的にも実体的にも国際社会では崩れている話です。軍の関与はもちろんのこと、韓国の家父長制の下でそういう仕事につかざるを得なかった女性たちは、やはりシステムとしての性奴隷であった。