幸福なポジティヴィスト

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用語学#2 accounts/説明

用語学#2 accounts/説明

 人々が別の社会的行為者や社会集団によって異議申し立てを受けたとき,自身の行動を正当であると弁明する言語が「説明」である.「言い訳/excuses」に特に興味を持った哲学者J. L. Austin(1962)と「動機の語彙/vocabulary of motives」に言及したC. W. Mills(1940)によれば,「説明」の概念は,犯罪者や逸脱者がやっかいな,または社会的に受け入れられないとみなされる行動への責任を否定したり減少させたりしようとするやり方を研究する「逸脱の社会学」において広く使われている.説明の効用は,犯罪性や逸脱性という非難のスティグマを避ける方法である.例えば,G. Sykes and D. Matza(1957)は,逸脱者が自身の行動を正当化する方法を示すために「中和の技術/techniques of neutralization」という概念を発展させた.巨大な会社から盗むことは,実際誰も傷つけていないとか,保険会社がその費用を補填するといった主張によって,正当化される.殺人(謀殺)は,犠牲者が死に値すると主張することで正当化される.こうした「逸脱行動」の理論は,D. Matza(1964)によって,「非行少年のドリフト」の分析のなかで先に発展させられたものだ.社会学者は説明における責任の否認に注目してきたために,告白のような社会的告発への新しい応答の分析をかなりの程度無視してしまっている.

参照:criminology; delinquency; differential association; labelling theory; neutralization.

[参考]

The Penguin Dictionary of Sociology: Fifth Edition (Dictionary, Penguin)

The Penguin Dictionary of Sociology: Fifth Edition (Dictionary, Penguin)

内田健,2011,「「動機」の社会学再考――C. W. ミルズの二つのテクストを読む」『新潟大学教育学部研究紀要』4(2): 187-198.
西川珠代,1991,「社会学における「動機」概念の変容――ウェーバーの動機理解と「動機の語彙」論の動機付与」『ソシオロジ』36(1): 63-79.
藤原信行,2008,「「動機の語彙」論再考――動機付与をめぐるミクロ・ポリティクスの記述・分析を可能にするために」『Core Ethics』4: 333-344.
Gresham M. Sykes and David Matza,1957,「Techniques of Neutralization: A Theory of Delinquency」『American sociological Review』22(6): 664-670.
高原正興,1979,「逸脱行動論の展開における諸問題――秩序理論からコンフリクト理論へ」『ソシオロジ』23(3): 37-53.
細井洋子,1979,「非行の社会学的理論――現代型非行解明の一助として」『犯罪社会学研究』4: 78-98.
柴野昌山,1979,「少年非行への現象学的アプローチ――少年の生活状況と非行化をめぐる諸問題から」『犯罪社会学研究』4: 57-76.
高原正興,1983,「「現代型」少年非行と逸脱行動論」『犯罪社会学研究』8: 187-201.