鈴木裕子,1991,「昭和史の最暗部――朝鮮人従軍慰安婦問題への接近」
鈴木裕子,1991,「昭和史の最暗部――朝鮮人従軍慰安婦問題への接近」『世界』558: 101-107.
従軍慰安婦は、戦時中は、マル秘の存在とされ、軍馬以下の扱いを受けた。関係者、つまり兵隊たちには「箝口令」が敷かれた。そのため、「凱旋」の勇士たちは、家に戻ってもその妻や恋人にそれを打ち明けることなく、過ぎ去った。
敗戦後は言うに及ばず、ことが露見することを恐れた軍は、敗戦とともに従軍慰安婦関係の書類を一切焼き払い、周到にも証拠隠滅を図ったのである。
朝鮮人女性の場合はこの性的搾取に加え、民族的搾取が加わった。いや、まさに「民族的抹殺」と呼ぶ方が適当であろうか。
もっとも“究極”的な民族抹殺政策として、結婚前の若い女性を捉えて慰安婦とし、根本から朝鮮民族の“種”を絶やしてしまおうとする意図がなかったといえるだろうか。