幸福なポジティヴィスト

アイコンの作者忘れてしまいました。

『天皇そして昭和——日本人の天皇観』

<書誌>
朝日新聞テーマ談話室編,1989,『天皇そして昭和——日本人の天皇観』朝日新聞社

天皇そして昭和―日本人の天皇観

天皇そして昭和―日本人の天皇観



呪縛の言葉 田口甚兵衛 68 無職 蕨市 175-176

それと同時に,日本国外にまで視野を拡げると,朝鮮の民衆の中で,男は戦争末期に日本兵同様に,徴兵され,あるいは炭坑のタコ部屋へ送られ,女は産業戦死という偽りの言葉で狩り出され,兵隊の肉欲の慰安に供せられたりした.そして彼らは「皇国臣民の誓詞」を唱えさせられ,「創氏改名」を強いられた.


字が読めないのに 原田務 65 元会社員 横浜市 176

直立不動の姿勢をとっている私たちを,古兵は気がふれたように殴った.原因は明らかに慢性的な空腹によるイライラと,性的欲求不満であった.


タバコ一本で重営倉 伴卓二 67 会社嘱託 豊橋市

それからしばらく過ぎた某日.夜の点呼後,小隊長の訓示があった.「先般『御賜のタバコ』を下賜されたが,某隊の兵がこともあろうに慰安所の女にくれてやったことが判明して憲兵に逮捕された.わが小隊にはそんな不心得者はいないと信じているが,念のため注意しておく」その後のうわさでは,その兵は憲兵隊で殴るけるの体罰を受け,おまけに重営倉に入れられた,とのことだった.

五族協和」の名の下に 滝口正次郎 71 無職 東京都 221-222

朝鮮の慰安婦たちも大勢連れてこられました.彼女たちがよく言っておりました.「朝鮮,朝鮮と言ってばかにするな.天皇陛下は同じだぞ」あの慰安婦の人たちは今どうしていることでしょう.

聖戦の実体と日本軍人の業 酒井与郎 66 獣医師 福井県 236-237

このときのある日,一人の朝鮮人慰安婦が私たち大隊本部の将校宿舎にどなり込んできた.「お前ら日本の将校よ,お前らには帰る国,日本があるが,わしらのような女に帰る国が一体どこにあるのか」と元慰安婦は憤怒に燃えていた.ここではじめて私は,強制連行されて従軍慰安婦にされた朝鮮娘の悲劇を知った.そしてこれを契機にして,私のいままでの常識はガラガラと音をたてて崩れていった.「聖戦の実体」を改めて考えたし,天皇のためという日本人の業も知った.

インパール白骨街道の雨 佐野次丸 73 無職 小金井市 239-240

遥かラングーンの空からか,聞こえて来るは勅命を受けた将軍たちの談笑の声,酒席であろうか.甲高い嬌声は慰安婦たちのたわぶれか.ああ,万骨は枯れてゆく.