幸福なポジティヴィスト

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吉見義明「陸軍中央と「従軍慰安婦」政策」

吉見義明,1993,「陸軍中央と「従軍慰安婦」政策——金原節三「陸軍省業務摘録」を中心に」『季刊 戦争責任研究』1: 4-11.


1.はじめに
金原節三「陸軍省業務日誌摘録」から明らかになったことをまとめていく。
・金原節三は陸軍省軍医学校を卒業、敗戦時第38軍軍医部長(フランス領インドシナ)。
「摘録」は戦争中に記した「陸軍省業務日誌」を戦後に整理摘録したもので、防衛庁防衛研究所図書館にコピーが所蔵されている。

2.日中戦争
軍紀違反多く、法務局長が憂慮している。
・「性病予防等のため、兵100人につき1名の割合で慰安隊輸入す」(1939年4月15日、第21軍軍医部長。)
・性病専門病院が必要なほど深刻。
・第一線の生活が精神的によくなかった。
→陸軍内の風紀がかなり乱れていることがわかる。

3.アジア・太平洋戦争
・「一方原住民は生活難のため売淫するもの多し。しかしバンドンその他性病多きをもつて村長に割り当て厳重なる検黴の下に慰安所を設くる要あり。」
→性病なき女性を事実上の強制によって集めようと計画していることが分かる。
軍紀違反数多い。
→強姦掠奪多し、25軍14軍など中国から東南アジア・フィリピンへの点線舞台に犯罪が数多く発生していることが分かる。
※フィリピン人慰安婦の多くが強姦からの「慰安婦」というプロセスをたどっていると証言していることが思い出される。
・性病患者も多い。
→強姦の多発と性病罹患の急増に慰安所増設をもって対処する日本軍。

4.おわりに
・出先の軍に加え、陸軍中央までもが「軍慰安所」の設置に乗りだしていた。
・強姦事件の多発、性病患者の増加、とりわけ第一線の戦場生活の粗悪さが背景にある。
・中国戦線を参考に、性病をもたない地元女性を村長に割り当てる形で徴収する計画がされていた。