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吉田裕「第1章 敗戦と占領」

<書誌>
吉田裕,2011,『兵士たちの戦後史』岩波書店

兵士たちの戦後史 (シリーズ 戦争の経験を問う)

兵士たちの戦後史 (シリーズ 戦争の経験を問う)

本書は岩波書店の「戦争の経験を問う」シリーズ(全13巻)の「兵士たちの経験」部門の一冊である。(クリックでリンクへ)

目次

序章 一つの時代の終わり

第1章 敗戦と占領   ⇦いまここ!

第2章 講和条約の発効
第3章 高度成長と戦争体験の風化
第4章 高揚の中の対立と分化
第5章 終焉の時代へ
終章 経験を引き受けるということ
あとがき
索引


第1章 敗戦と占領:9-50.
1.戦場の諸相
兵士らが戦った戦争はどのようなものだったのか、戦友たちはどのように亡くなったのか。
(1)大量の餓死者
230万人の戦没者数のうち、上限が140万人の61%(藤原彰)、下限が85万人の37%(秦郁彦)と推計できる。
(2)艦船や輸送船の沈没による海没死
推計37万4000人、民間人は2万5000人(秦郁彦
(3)特攻死
4000人ほど。水上特攻作戦の「大和」を加えれば倍増。
(4)自殺や自殺の強要、軍医や衛生兵などによる重度の傷病兵の殺害、投降する兵士の殺害。
硫黄島では約7割がこれだという証言がある。

⇒自分の行動で何とかできそうな戦闘行為によって死亡する兵士はかなり少ない。

2.敗戦と復員
・日本軍の軍紀の急速な崩壊
命令なき逃亡・離隊、処刑を恐れたパニック、軍隊倉庫の火事場泥棒的な略奪、上官への暴行、命令無視。
・復員兵への冷たい視線。
昭和天皇ヒロヒトの免責に向けて、GHQの対日政策ではすべての責任を軍部に転嫁し、日本国民と昭和天皇ヒロヒト軍国主義勢力の犠牲者として強調した(ジョン・ダワー『敗北を抱きしめて』)。その中で復員兵に向けられた視線は冷たかった。
・米兵相手の売春婦パンパンの存在
→「敗戦はすなわち「日本男児」の〈敗北〉を意味していた」(木村涼子 2006)。西村政英は復員直後「浮浪者の群れ、アメリカ軍と戯れるパンパンと言われる女の姿。タヌキかキツネかは知らないけれども、けばけばしく、毒々しい安物の化粧姿、ぷかぷか吹かすタバコ片手姿と、モンペ姿はどうひいき目に見ても不似合いでしたが、これも敗戦国民の恥も外聞もなく生きようとする一つの姿かと、悲しくも体から血のひくような思いになりました」と回想している(西村 1981)。
・復員兵の社会復帰
→就職難、生活難、生きていた英霊(自分の妻が未亡人として弟などと再婚していた)、
戦後民主主義への反発と受容