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仲程昌徳『沖縄の戦記』

仲程昌徳,1982,『沖縄の戦記』朝日新聞社

沖縄の戦記

沖縄の戦記


目次

序 時期区分
Ⅰ 戦記作品の先駆
Ⅱ 沖縄人による戦争記録
Ⅲ 本土の作家の沖縄戦
Ⅳ 体験記録集の輩出
Ⅴ 沖縄の作家の沖縄戦
あとがき


Ⅴ 沖縄の作家の沖縄戦
慰安所の少女」
・沖縄の作家が沖縄を扱うとき、何らかの形で、歴史や伝統の問題が含まれるのだが、そうした特異な視点から沖縄戦を描いたのが、船越義彰の1976年2月『新沖縄文学』31号に発表された「慰安所の少女」である。
→いわゆる当初から従軍慰安婦ではなく、空襲により300年近い歴史を持つ辻遊郭が空襲で焼失したことによって、そこの遊女らが慰安所に集められ、兵隊たちを相手に戦争を迎えるという沖縄戦が描かれている。日本軍が、「慰安婦」として戦場に女性たちを連行したことは山谷哲夫の『沖縄のハルモニ』で明らかにされているが、現地でもそのような女性をかき集めた。(221-222)
・特定の将校を相手する一の主人公は、まだしも慰安婦として幸せだったと言える。また将校も人柄よく、日本兵の行動に対する批判がなく、行為をもって扱ったものとして特異な位置にある。(223)
・船越の作品は、「300年以上もつづいてきた伝統」が「兵隊の前に踏みにじられ粉々」にされ「辻という沖縄特有の遊里の体質を変えて」しまったことに対する嘆き、すなわち、沖縄におけるもう一つの生活伝統としてあった習俗が崩壊していしまったことを取り出したものであったし、戦争がすべてをのみこんでしまうものであることを書いたものであったといえよう。(223)