幸福なポジティヴィスト

アイコンの作者忘れてしまいました。

メディア・スタディーズのアウトライン

1.メディアをめぐる知―学問的系譜

マスコミュニケーション
1940年のH・キャントリル『火星からの侵入』
1948年のラザースフェルド『ピープルズ・チョイス』
→社会調査や統計処理をベースに、社会学や心理学の知見に基づいて、メディアの効果・影響を分析すること。
→「利用・満足研究」、「議題設定機能」仮説などの研究が派生した。

〇ジャーナリズム論
1922年のW・リップマン『世論』
1926年の藤原勘治『新聞紙と社会文化の建設』
1930年の棟尾松治『新聞学概論』
→新聞が世論形成や政治過程に大きな影響力をもったことを背景に、新聞記者やジャーナリストの活動を社会科学的に考察すること。

〇映画・写真論
→映画や写真、ポスターなどを「芸術」や「作品」として人文科学の知の対象とみなす。

〇M・マクルーハンのメディア論
1964年の『メディア論』
→「いかなる技術も徐々に完全に新しい人間環境を生み出す」ことを強調して「メディアはメッセージである」と述べた。
→メディアは単なる情報を伝達する媒体ではない。むしろメディアとは、その物質的な特性に基づいて、独自の「空間」「時間」を編成し、人間の感覚・知覚のバランスや思考のあり方さえも組み変えていく。
⇒メディアが人間をつくりだしたのではないか。

〇W・ベンヤミンのメディア論
「複製技術時代の芸術作品」、「言語一般および人間の言語について」、『パサージュ論』
→新しい複製技術が、既存の芸術観を解体し、社会的に編成された感覚・知覚の様式を組み変える潜在的な力を内包しつつも、そのメディアの可能性が社会の力によって押しつぶされ、ファシズム全体主義を生み出す力に転換するというメディアの社会的・政治的な力を問題とした。
アドルノ、ホルクハイマーらフランクフルト学派
 ロラン・バルト『神話作用』
 ライト・ミルズ『権力・政治・民衆』らに派生

〇メディアをめぐる第三の知
 文化と政治を再定位した「カルチュラル・スタディーズ
 「視覚文化論」
⇒メディアをめぐる第三の知の営みとそれを現代に継承する様々な思索が、複製文化の魅力と一体になった現代の政治、権力、イデオロギーの問題を解き明かすことに派生した。


2.メディア・スタディーズはなにを学ぶのか
〇メディア・スタディーズの系譜からわかること
メディアをめぐる諸々の知は、出自のはっきりしない、従来の学問ないし知の枠組みには収まりのつかないものとして出発した。
→明確な領域を形成せず、領域横断的な知の営みとして展開している。
→現在でもそれは変わらない。

〇何を学ぶのか
既存の領域区分に従うことなく、その枠組みを横断する超領域的な実践としての知のあり方。
確固たる対象がないからこそできる研究。

〇メディア・スタディーズとは何か
複数形の学問
→①諸学問分野にまたがる研究の方法の複合性
 ②従来の研究対象や領域設定を横断していく複合性
 ③分析対象であるメディアそれ自身の複数性


◆参考文献◆
伊藤守編著『やわらかアカデミズム・〈わかる〉シリーズ よくわかるメディア・スタディーズ 第2版』(ミネルヴァ書房 2015)