幸福なポジティヴィスト

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石田英敬,2014,「溶解するメディア公共圏と「朝日新聞」問題」

<書誌情報>
石田英敬,2014,「溶解するメディア公共圏と「朝日新聞」問題」『世界』862: 114-121.

世界 2014年 11月号 [雑誌]

世界 2014年 11月号 [雑誌]

・戦時における性暴力というこの国の過去と、原子力過酷事故とエネルギー政策という未来にかかわる重要案件において、この国の「日本のもっとも代表的なリベラル紙」、「中道左派紙」が未曽有の危機に陥ることは、一新聞社の不祥事や信用喪失、あるいは経営的危機を乗り越えて、わが国の政治と社会世論の全般に影響を与えずにはいない。
今回の朝日新聞問題は、ジャーナリズム上の准拠点を占めてきた中心紙の信頼が揺らいでいるのだから、ジャーナリズム全体の基本構図に動揺が起こっても不思議ではない。
競争相手の読売・産経、さらには週刊誌は否定派の論調を強め扇情的な見出しが並んでいる。
朝日新聞問題は、こうした政治勢力にとって戦争をめぐる加害責任にかかわる議論を、「虚報」による「一億総報道被害者」の物語に転換するきっかけが簡単に見つかる。外国からの批判が高まるのは、「内なる敵」(「売国」勢力)が存在するからであって、その最たるものが「朝日」だ、というストーリーが右派メディアにより広がる。