幸福なポジティヴィスト

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用語学#10 addiction【アディクション/嗜癖】

用語学#10 addiction【アディクション嗜癖

 嗜癖とは,身体的あるいは社会的に有害であるとみなされている物質,典型的には薬物への沈溺あるいは依存を意味する.あるアプローチでは,(1)犯罪的行動と関連した嗜癖の分析,(2)年齢,階級,性による嗜癖の社会的分布,(3)嗜癖の社会―心理的起源(親の影響)といったテーマが集中的研究されてきた.こうした研究は,嗜癖行動における学習と機会の役割を強調している.これに対して,行動主義を受容した実証主義的アプローチは慢性的な嗜癖を規定する生理学的—心理学的要因と,その回復可能性に関連した問題に関心を寄せる傾向がある.
 嗜癖に対する第三のアプローチは,象徴的相互作用論に基づいている.このアプローチは,(1)個人が,例えば逸脱下位文化の中で薬物使用者となる社会的過程と社会的文脈,(2)薬物使用へのコミットメントを維持する過程,(3)嗜癖者に対する社会的反応,あるいは嗜癖者に社会的逸脱者というラベルを付与する過程,などに関心を寄せる.嗜癖者となることは明確な段階をもったキャリアの観点から理解され,嗜癖者はこうした経歴を積む中で不名誉なラベルを受容し,その新たなアイデンティティに対応するようになる人物として描かれることになる.したがって,逸脱の社会学は,有害な石反社会的とみなされた個人に対して法の執行機関や世論が社会的統制を行う際に用いる,問題を含んだ曖昧なラベルとして「嗜癖」を扱うのである.さらに,行動の医療化という傾向によって,嗜癖という概念はギャンブルといった多様な有害ないし反社会的活動にまで拡張されて応用されるようになっている.ギデンズはこうした拡張を,自己の再帰的プロジェクトの一部であるとみなしている.嗜癖に対する処置には薬物利用が不快な体験と結びつくようにする「忌避療法」やアルコール依存者匿名会のような自発的組織への参入を通じて嗜癖の減少と除去を学習するプログラムなどがある.しかし,いずれの方法においても回復率は低く,嗜癖は繰り返される傾向がある.

The Penguin Dictionary of Sociology: Fifth Edition (Dictionary, Penguin)

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