幸福なポジティヴィスト

アイコンの作者忘れてしまいました。

山崎洋子『女たちのアンダーグラウンド』

<書誌>
山崎洋子,2019,『女たちのアンダーグラウンド――戦後横浜の光と闇』亜紀書房


目次

プロローグ
第一章 闇からの声
第二章 横浜・混血の系譜
第三章 接収の街と女たち
第四章 大和・葉山・札幌――混血児養護施設
第五章 高度経済成長が生み出した闇
第六章 横浜の「外国人」たち
第七章 いまだ渦中――沖縄
第八章 逐われた女たち
エピローグ
参考文献


第三章 接収の街と女たち
〇米軍慰安施設
8月18日、政府は各都道府県に向けて、米軍のための特殊慰安施設を用意するよう通達した。通称RAA協会と言われるものだ。
鎖国を解いて開国したときも、日本は同じことをしている。乗り込んでくる海外からの脅威に対して遊郭という感障壁を築いた。」(91)

慰安施設の目的は、「占領軍から善良の婦女子の貞操を護るため」ということだった。遊郭の経営者、警察らが奔走する。
※戦中の慰安婦制度が、性病による戦力の低下、治安維持、防諜、慰安の提供という目的で作られていた(吉見 1999)と考えれば、治安維持のためだけに作られたのがRAになる。性病を恐れたから消毒や検黴を義務付けているが、RAAはそうした目的ではないので、そうした義務もなく性病が蔓延した。制度はこうも性格を異にするのかと思う。本質論からはわからない微妙な差異である。

横浜は互樂荘という建物が使われた。女性の数は100人ほど。
一週間ほどで閉鎖。
以降は米軍による強姦。私娼、街娼、パンパンと呼ばれる女性たち。
米軍による犯罪が紙面で報じられることもなくなっていく。
治安維持法戦前の日本の情報統制、民主主義否定の象徴とされている。これは現在も反自民反戦運動などでかなり言及されるお決まり文句でもある。けれど、治安維持法は明文されており、その存在すら知られず米軍の犯罪が紙面から消えるGHQ占領政策下における非明文化された情報統制が過小評価されていないか?一番怖いのは知らないうちの検閲だろうに。

〇GIベイビー
アメリカ兵の俗称であるGI。その子供であるからGIベイビー。
混血児の実態調査は国会でも議論になるも、厚生省はなにもしていない。
その穴埋めをするように、篤志家や宗教団体が保護に乗り出している。